泣く

実家で飼っていた猫がいなくなった。
どこかで死に場所を決めていて
きっとそこへ行ってしまったのだろう。
ずっと家の中と外と自由に行き来していた
自由気ままな育て方をしていたから。


その猫には娘が一匹いて
我が家で元気に暮らしているのだけれど
母猫がそばにいるせいか
いつまで経ってもヘタレで、
よその猫が来てもビビって逃げるような猫だった。
けれど、親猫がいなくなってから
その娘猫がよその猫を追い払うようになった、
という話を母から聞いて、
なんだか急に切なくなってしまった。


私たち人間はいなくなった親猫が
「おそらく死んでしまったのだろう」
と不明になる前の体調や状態を加味しての憶測と
いなくなったという事実を併せて
死んだという絶対的な確約もなく感じているだけだけれど
娘猫はきっと感覚として知っているのだろう。
だからこそ今まで追い払わず逃げていたよその猫を
果敢に向かっていって追い払っているのだろう。


親猫はもう帰ってこないのだと娘猫に教えられた気がして
相方にしがみついてわんわん泣いてしまった。
泣いて猫が帰ってくるわけじゃないけど
もし本当に死んでしまったのなら、
どうかどうか、安らかに。
そして天国でまた逢おう。